あなたの働く目的は?
「おやじの弁当」
(戦前の家庭の姿、親子の生き様)
故 樋口清之教授(国学院大学)の随筆より
戦前、樋口氏の友人で、よく貧乏に耐えて勉学にひたむきに努める人がいた。
その友人が勉学に励んだ動機は、「おやじの弁当」だという。
友人はある日、母の作る父の弁当を間違えて持って行ってしまった。
彼曰く、「おやじの弁当は軽く、俺の弁当は重かった。おやじの弁当箱はご飯が半分で、自分のにはいっぱい入っており、おやじの弁当のおかずは味噌がご飯の上に載せてあっただけなのに、自分のにはメザシが入っていたことを、間違えて初めて知った。」
父子の弁当の内容を一番よく知っている両親は一切黙して語らず、肉体労働をしている親が子供の分量の半分でおかずのない弁当を持ってゆく。
これを知った瞬間、「子を思う親の真(愛)情」が分かり、胸つまり、涙あふれ、その弁当すら食べられなかった。」
その感動の涙が勉学の決意になり、涙しながら両親の期待を裏切るまいと心に誓ったという。
さて、ここからは現代版「おやじの弁当」をご紹介しよう。
(ブルックリンでのベトナム研修生の生き様)
ブルックリンには現在3名のベトナム研修生が在籍している。技能研修生とは名ばかりで、実際には出稼ぎである。
私「来日の真の目的は?」
研修生「ここまで育ててくれた両親を楽にさせてあげたい。弟、妹の学費は私が出してあげるんだ。」
日本で働く動機は明確である。が故に素晴らしい働きっぷりである。一所懸命である。コミュニケーション能力は高い。俗にいう「報・連・相」もしっかり実行している。3年の期間契約で2年が過ぎたが、仕事へのモチベーションは高いままだ。一緒に働いていて気持ちが良い。一言で表すと「凄い」
ベトナム研修生を受け入れたことで分かったことは「明確な動機があればこそ一所懸命になれる」ということ。
さて、日本の若者に「働く目的は?」と問いかけたら何と答えるだろう。